第33回(平成16年)春燈賞 小泉 三枝

春燈賞(抄)25句 自選

満持しとつときの独楽放ちけり
若水の一杓猫の碗にかな
折詰の結び目堅し探梅行
茶運び人形春連れて来たりけり
蒼天を鋲止めにせり銀杏の芽  
山影に入りて野焼の猛りけり
春水にメタセコイアのよろけ縞
春岬海光胸をぬらしけり
抒情詩人兵たりし日のかぎろへり
仲見世をふくらまし行く荒神輿
真四角に笑顔の詰まるさくらんぼ
独り居を思ひ知つたる昼寝覚
空中庭園風の運びしねぢり花
岩肌に蜥蜴の鼓動残りけり
踊子のおもひ端縫ひの紅絹の色
町並に古色戻りぬ祭あと
うす口醤油育む水の澄みにけり
敦盛を語る須磨琴雁渡し
小春凪小石ころがす小波かな
われからやひねくれ放哉泣かせたる
白壁の琴糸の里柿日和
竹生島の神域に入る時雨かな
獅起し若狭京まで十八里
水仙を挿してフェリーの操舵室
空返事ばかり戻りぬ冬障子